発達障害は、学校や会社で周りの人とコミュニケーションがとれなかったり、社会生活が上手くいかなかったりすると、自分が発達障害なのではないかと疑う人が増えてきています。

発達障害の診断は、なかなかスムーズに進みません。
総務省が平成29年度に公表したデータによると、初めて予約を取るまでに3ヶ月以上もかかることが多いのが現実です。

そこで、発達障害の診断にかかる時間を短縮する方法と、初診待機を解消するための取り組みについて紹介します。

 

出典:厚生労働省HP

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発達障害の診断には何が必要なのか?

発達障害の診断は、専門の医師が行います。医師は、以下のような情報をもとに、発達障害かどうかを判断します。

・過去の生育歴:出生時の状況や、幼少期から現在までの発達の過程や困りごとなどを聞き取ります。
・知能検査:ウェクスラー知能検査などを用いて、知能指数や処理速度、作業記憶、知覚統合などの能力を測定します。
・行動観察:本人の言動や態度、コミュニケーションや集中力などを観察します。
・脳波検査:脳の電気信号を測定して、脳の機能や活動に異常がないかを調べます。
・血液検査:遺伝子やホルモンなどの影響による発達障害の可能性を調べます。

これらの情報を総合的に分析して、発達障害の種類や程度を診断します。
発達障害には、自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠如・多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)などがあります。

発達障害の診断にかかる時間を短縮する方法とは?

発達障害の診断に時間がかかる問題を解決するために、平成30年から厚生労働省が始めた事業が「発達障害専門医療機関ネットワーク構築事業」です。
成人期の発達障害者の支援に高い専門性を持つ拠点医療機関が、地域の医療機関に研修や情報提供を行い、ネットワークを作っています。

この事業の目的は、発達障害の診断に必要な情報を、医師以外の専門家に委託することで、医師の負担を減らし、診療時間の短縮を図ることです。

具体的には、以下のような流れになります。

医療機関内にカウンセラーや発達支援者を配置し、過去の生育歴や現在の困りごとなどを聞き取ります。
聞き取りの結果をカルテとしてまとめて、医師に渡します。

医師は、カルテをもとに、知能検査や行動観察などを行い、発達障害かどうかを判断します。
このように、医師が直接行わなければならない作業を減らすことで、診断までの期間を短縮できるというのが、この事業の考え方です。

この事業によって、どれくらいの効果があるのでしょうか?
参加した医療機関のデータを厚生労働省のHPで見ると、初診までの待ち時間が平均で2ヶ月ほど短くなっていることが分かります。

さらに、医師の仕事の負荷も減り、診療のレベルも高まったという結果も出ています。

発達障害の診断が早くなるとどんなメリットがあるのか?

発達障害の診断が早くなると、どんなメリットがあるのでしょうか?
以下のようなメリットが考えられます。

・発達障害の理解や受容が進む
・発達障害に適した支援や療育が受けられる
・発達障害の特性を活かした生き方やキャリアが見つかる
・発達障害の自己肯定感や自尊心が高まる
・発達障害のストレスや不安が減る
・発達障害のコミュニティや仲間ができる

特に子どもの場合は、発達障害の早期診断が重要です。子どもの脳は3歳までに急速に発達しますが、7歳以降には脳細胞が減少し、脳の成長が止まります。

そのため、発達障害の特性を緩和させる療育を受けるには、できるだけ早い時期に始めることが望ましいのです。

発達障害の療育は、発達障害の種類や程度によって異なりますが、一般的には、以下のようなものがあります。

・言語療法:言葉の発音や理解、表現などを改善するためのトレーニングです。
・作業療法:日常生活の動作や感覚統合などを改善するためのトレーニングです。
・行動療法:社会的なルールやマナー、集中力や自制力などを改善するためのトレーニングです。
・心理療法:自己肯定感や自尊心、ストレスや不安などを改善するためのカウンセリングやセラピーです。
・薬物療法:注意欠如や多動性などの症状を抑えるための薬を服用します。

発達障害の療育は、発達障害の人の能力や可能性を引き出し、より快適に生きるためのサポートです。

しかし、発達障害の療育にも問題があります。それは、療育の施設や人員が不足していることです。

発達障害の人の数は毎年増加していますが、それに対応できる療育の資源は追いついていません。

そのため、療育を受けるには、症状の程度によって専門機関が判断し、割り振っています。

発達障害と診断されても、療育を受けられない人も多いのです。

発達障害の診断と療育の現状と課題

発達障害の診断と療育の現状と課題をまとめると、以下のようになります。

・発達障害の認知度は上がってきているが、まだ偏見や差別が残っている
・発達障害の診断には時間がかかり、初診待機が長い
・発達障害の診断にかかる時間を短縮する取り組みは始まっているが、まだ効果が不十分
・発達障害の療育は重要だが、施設や人員が不足している
・発達障害の療育を受けられない人も多い

これらの課題を解決するには、以下のようなことが必要だと思います。

・発達障害の理解や受容を促進する啓発活動や教育を行う
・発達障害の診断に関する情報や相談窓口を充実させる
・発達障害の診断にかかる時間を短縮する取り組みを拡大し、効率化する
・発達障害の療育に関する予算や人材を増やす
・発達障害の療育を受けられる機会や方法を多様化する

まとめ

発達障害は、生まれつきの脳の特性で、普通の人とは違う困りごとや能力があります。
発達障害の診断は、自分の特性を知り、適切な支援や療育を受けるために必要です。

しかし、発達障害の診断には時間がかかり、初診待機が長いのが現状です。

そこで、発達障害の診断にかかる時間を短縮する方法と、初診待機を解消するための取り組みについて紹介しました。

発達障害の診断が早くなると、発達障害の理解や受容が進み、発達障害に適した支援や療育が受けられるようになります。

発達障害の診断と療育の現状と課題を把握し、発達障害の人の生きやすさを向上させるために、社会全体で取り組んでいきましょう。

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